医療機関が資金調達をする際,金融機関等から担保の提供を求められることがあります。
医療機関は,国等に対して健康保険に基づく診療報酬を請求することができます。診療報酬の支払は,ほぼ確実にされることから,融資をする側にとっても魅力的な担保です。
この点,診療報酬債権への担保設定につき,主として将来債権の譲渡が可能かという点で問題とされていました。
しかし,将来債権の譲渡が実務上認められたことから(最判平成11.1.29),担保設定も可能と考えられています。
ただし,前記判例では「契約締結時における譲渡人の資産状況,右当時における譲渡人の営業等の推移に関する見込み,契約内容,契約が締結された経緯等を総合的に勘案し,将来の一定期間内に発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約について,右期間の長さ等の契約内容が譲渡人の営業活動等に対して社会通年に照らし相当とする範囲を著しく逸脱する制限を加え、又は他の債権者に不当な不利益を与えるものであると見られるなどの特段の事情の認められる場合には,右契約は公序良俗に反するなどとして,その効力の全部又は一部が否定されることがあるものというべきである。」と判示しています。
判例の事案では8年3ヶ月の期間の譲渡が有効とされましたが,担保対象となる債権の発生期間が長期に及ぶような場合には,その全部又は一部が無効とされる可能性がある点には留意が必要でしょう(Q&Aヘルスケア施設の法律と実務57ページ)。
なお,このような将来債権譲渡については,確定日のある債権譲渡通知ないし債権譲渡登記によって,譲受人は第三者に対する対抗要件を具備することとなります。