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平成28年度:茨城県弁護士会土浦支部支部長
平成30年度:茨城県弁護士会副会長および関東弁護士会連合会理事
現職:関東弁護士会連合会 消費者委員会副委員長,取手市役所 政治倫理審査会委員,茨城県弁護士会 地域司法充実推進委員会副委員長・消費者委員会副委員長・事務局運営室室員・弁護士会照会調査室室員
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高等裁判所の家事審判に対する不服申立の期限はいつまでで効果はどのようなものか(結論:5日以内の手続が必要で,原則として執行停止の効力がない)

調停前置となっている家事事件で,調停不調となり審判に移行すると,家庭裁判所で審判となります。家庭裁判所の審判の結果に納得ができない場合,高等裁判所宛に即時抗告申立をすることとなります(家事事件手続法85条1項)。

家庭裁判所の審判に対する即時抗告申立期間は,2週間です(家事事件手続法86条1項)。

では,高等裁判所が家庭裁判所の審判に対する即時抗告につき決定を出した場合,いつまでに手続を取る必要があり,その手続ではどのような効果が生じるのでしょうか。

高等裁判所の家事審判事件についての決定に対しては,その裁判に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに,最高裁判所に特に抗告をすることができると定められています(特別抗告,家事事件手続法94条1項)。

一般民事事件おける上告期間は2週間ですが(民事訴訟法313条,285条),家事審判事件については特別の規定が置かれています。

そして特別抗告についての規定である家事事件手続法96条2項では,民事訴訟法336条2項が準用されています。

具体的には,民訴法第325条第1項前段(上告裁判所による原判決の破棄差戻し等),同条第2項(決定に影響を及ぼす明らかな法令の違反がある場合における最高裁判所による原判決の破棄差戻し等),同条第3項後段(差戻しまたは移送を受けた裁判所が裁判をする場合における上告裁判所がした判断の拘束力)および同条第4項(原判決に関与した裁判官の排除),第326条(上告裁判所による破棄自判)ならびに第336条第2項(特別抗告の期間)の各規定の趣旨は,家事審判の手続における特別抗告審の手続にも妥当することから,家事審判の特別抗告についてこれらの規定を準用することとされています。

したがって,特別抗告は, 5日の不変期間内(家事事件手続法96条2項において準用する民訴法第336条第2項)にしなければなりません(逐条解説 家事事件手続法317ページ)。

さらに,特別抗告についての効果も,一般民事事件おける上告とは異なります。

一般民事事件においては,上告されると判決は未確定のままです。

しかし,特別抗告は,特別の不服申立て手段であること,家事審判の手続における迅速処理の要請が強いことから,家事事件手続法95条1項本文では,特別抗告に執行停上の効力を認めないこととしています。

また,家事事件手続法74条5項は「審判の確定は、前項の期間内にした即時抗告の提起により、遮断される。」と明示されており,即時抗告ができない高裁の決定に対する不服申立には確定遮断効がない,ということになります。

執行停止の効力が原則としてありませんので,執行停止が例外的に認められる場合(家事事件手続法95条1項但書)を除き,高等裁判所の決定が出されて決定の送達がされれば強制執行が可能となります。

つまり家事審判事件では高等裁判所の決定で本執行が可能になる(一般民事事件では,未確定の判決に基づき仮執行ができる場合はありますが,本執行は確定までできない)点で,一般民事事件とは大きな違いがあるということになります。

農地の売買契約における消滅時効はいつから何年か(結論:農地法の許可申請協力請求権は契約時から5年ないし10年,売買代金の返還請求は私見だと代金引渡日から5年ないし10年)

農地につき,所有権移転を完成させるためには農地法に基づく許可が必要になります(農地法3~5条)。

そのため,当事者間で先に売買契約を締結して,条件付所有権移転仮登記を登記し,農地法に基づく許可が得られたことを停止条件として売買が完成するという手法がとられることがあります。

日本におけるバブル崩壊前は,不動産が値上がりしていたので,農地について売買契約が締結されていたことがかなりあったようです。既にバブル崩壊から20年以上が経過していて,売買契約および仮登記から30年以上経過した事例も見受けられます。

このような農地の売買契約における許可申請協力請求権につき,判例では農地の所有権移転に伴う請求権ではなく売買契約に伴う債権的請求権であるため契約締結の日から10年で消滅時効が完成すると判断されています(最高裁判決昭和50年4月11日,他ブログで1日とあるのは日にちの誤り,農地法の実務解説 〔三訂版〕)141ページ)。

つまり,改正前民法下において締結された契約の場合,契約から10年経過すれば,売主は許可申請協力請求権が時効により消滅したと主張することが可能になります。

なお改正後民法の下で契約された場合には,消滅時効の期間は5年(166条1項1号)になるでしょう。

ただし,契約やその後の経緯等に照らして許可申請協力請求権についての消滅時効の援用が信義則違反となる場合もあります(最高裁判決昭和51年5月25日)。

では,許可申請協力請求権について消滅時効を売主が援用したとき,農地の売買契約と既に支払った売買代金はどうなるのでしょうか。

まず,農地法3条7項により,許可のない農地売買は無効と定められています(逐条解説 農地法 〔改訂版〕59ページ)。

そうすると,そもそも売買契約は契約当初から無効で,許可が得られた場合にのみ有効になる契約ということになります。

無効の契約に基づき売買代金を買主が売主に支払っているため,売買代金支払について法律上の原因がないことから,不当利得(民法703条)にあたります。

では,許可申請協力請求権についての消滅時効の援用をした売主に対して,買主は不当利得にあたるとして売買代金の返還を求めることができるのか,できるとしてその返還請求は認められるのでしょうか(消滅時効にかからないのか)。

このあたり,単に「売買代金の返還が問題になる」とあいまいな表現をしているものはあるようですが,売買契約から相当期間が経過した後に売主からの返還請求が認められるかについて,はっきりと説明した書籍やインターネット上の言説はないように思います。

もし許可申請協力請求権について消滅時効を売主が援用したことで売買契約が履行不能になり,債務不履行が援用時点で確定し,売買契約が取消になったのであれば,取消の時点が不当利得に基づく返還請求権の起算点となります。

しかし,農地の場合はそもそも許可のない売買契約は無効の契約です。

つまり,有効な売買契約が取消になった場合とは異なります。

売買契約が当初から無効であるとすれば,売買代金を買主が売主に渡した時点から,売買代金について不当利得返還請求に基づく返還請求をすることが可能です。

このように考えると,売買代金の消滅時効の起算点は,売買代金の引渡時と考えることができます。

そのため,売主は売買代金の引渡時から改正前民法では10年経過,改正後民法の下での契約ならば5年経過により,不当利得返還請求権について消滅時効の援用ができると考えられます(私見)。

取消と無効で何が違うのかというと,例えば売買契約から30年が経過して売主が許可申請協力請求権について消滅時効を援用した場合,取消と考えると許可申請協力請求権について消滅時効を援用した時点が売買代金についての不当利得返還請求権の消滅時効の起算点となるため,売主には売買代金の返還義務が生じてしまうことになります。

しかし,前述のように売買契約が当初から無効であったとすると,売買代金についての不当利得返還請求権の消滅時効も既に完成していますから,消滅時効の援用により売買代金の返還義務がなくなるという結果になります。

時効の起算点をいつにするかということも法律論としてはなかなかやっかいなところで,事案ごとに事実を整理して法的分析をすることが欠かせません。単純に見えるような制度も意外な落とし穴があったりしますので,法律問題についてはきちんと弁護士に相談されることをおすすめします。

不法行為に基づく損害賠償債権を相殺契約における受働債権とできるか(結論:既に発生している不法行為による損害賠償債権の場合は可能)

民法509条は,

「次に掲げる債務の債務者は,相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし,その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは,この限りでない。
一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)」

と,不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止を定めています。

相殺は相殺権者による単独行為ですが,どんな場合であっても不法行為に基づく損害賠償債権を受働債権とすることはできないのでしょうか。

すでに発生している不法行為による損害賠償償権について,債権者と債務者が相殺契約を結ぶことは差し支えないと考えられています。不法行為による損害賠償債権もこれを自働債権とする相殺が許されるように,被害者たる債権者の意思に反しない限り相殺を認めてよいからです。同様に,双方とも不法行為による損害賠償債権である場合,単独行為としての相殺は禁止されますが,相殺契約は締結できます。

この点判例は「不法行為二因ル債務ノ相殺ヲ以テ債権者二対抗スルコトヲ得サルハ民法第509条ノ規定スル所ナリト雖モ,当事者ノ契約ヲ以テ之ヲ約スルハ法律ノ禁スル所ニ非ス」と判示しています(大判大1・12・16民録18・1038,注釈民法 12 債権 3 434ページ)。

実務上でも,交通事故等で双方に過失がある場合,双方の損害額に過失割合を乗じて算出した賠償金につき,双方が支払いをするのではなく(いわゆるクロス払い),より少額の賠償金を相殺(控除)して残額を支払うことが一般的に行われています(いわゆる相殺払い)。

この相殺払いの相殺部分は,詳しく法的性質を分析すると既に発生している不法行為による損害賠償債権を受働債権として相殺契約を締結したものと解されます。

しかしながら,将来発生するかも知れない不法行為に基づく損害賠償債権につき予め相殺契約ないし相殺予約をなすことは509条の潜脱となり,許されないと考えられます。

借地契約終了時の立退料の算定はどのように行うのか(結論:借地権価格を基準に諸事情を加味)

土地の所有者から,土地を貸している借地人に対して借地契約の解除申し入れをした際,立退料の支払いを求められることがあります。

では,立退料はどの程度の金額が妥当なのか,またどのように算定するものなのでしょうか。

立退料の算定方法は,事案ごとに必ずしも同じではありません。

更地価格に借地権割合を乗じた借地権価格を基準とするもの(東京地判昭56.4.28判時1015-90,東京地判昭59.12.21判タ553185,東京地判昭62.3.23判時1260-24,東京地判平2.425)が多く,営業補償,建物価格,移転に伴う精神的苦痛に対する補償,さらには移転実費(運送費,荷造費,動産損料,移転通知費等)なども立退料の内容になります。

借地権設定者が立退料の提供等を申し出たか否か,その金額等が考慮されます。

立退料の金額については,双方の必要性の程度や借地期間等によって異なることになります。また,当該土地をどのように利用しているかによっても異なります。

一般的にいえば,業務用借地のほうが居住用借地よりも立退料の金額は高くなると思われます。

現実の裁判では,当事者双方に存する諸事情を考慮してケース・バイ・ケースで決められることになります。

なお裁判所は,借地権設定者の申出額と特段に相違しない範囲内で,申出額を超える立退料の提供を命ずることができますが,申出額を下回る立退料の提供を命ずることは許されません(民訴246条,コンメンタール借地借家法44ページ)。

継続的取引の支払につき消滅時効を主張された場合,債務承認があったと反論できるのか(結論:都度都度弁済する契約か,一部入金かで異なる)

事業者間で継続的な取引がされていることがあります。

例えばA社とB社の間で,A社が金属原料の卸販売をしてB社がA社に対して毎月支払が発生するような例が想定されます。

このような場合に,現時点まで継続的取引を行っているが,B社に未払があり,かつ支払発生日から5年が経過しているとして消滅時効を主張された場合,A社はB社が毎月支払をしていることを理由に債務承認があったと反論できるのでしょうか。

まず,継続的取引の場合にどのような支払方法であったかを検討する必要があります。

毎月ごとの売上げ,請求を各別に明示した上,明示された金額全額を支払い,未払額を翌月に残さない形で支払がなされていた場合があります(以下「全部弁済型」という)。
次に,毎月ごとの売上げ,請求は明示されるが,債務者がその一部を内金入金とし支払い,未払残高が毎月あるいは特定の時期に発生していたような場合があります(以下「一部入金型」という)。

この点,一部入金型で債務承認があったか争われた東京高判昭41・10・27判時469・41では,債権者の示す残債務額を全面的に納得した上で支払ったものでないとしても,その当時真正に残っている債務全体に対する内入れの趣旨で支払をした場合には支払の都度その当時における総残債務を承認したものと認めるべきであるから,支払の都度総残債務の時効が中断しているとして,時効中断効を認めています。

これに対して,全部弁済型の場合には,毎月の当該支払によって債権債務は全て消滅し,未払は存在しないという黙示の了解が成立しているといえるため,時効中断が成立しないとなるでしょう。

ただし全部弁済型であっても,全部の弁済でないことの問題意識が債権者側にあり,そのことを債務者側も知っていたことが立証できれば,特段の事情があったとして時効中断が成立する可能性もあります(〔改正民法対応版〕続 時効の管理205ページ)。

直前停止(直前停車)した車両に過失割合が認められるのか(結論:停止(停車)した車両の停車位置,停止(停車)してからの時間経過などによって過失がある場合もない場合もありうる)

交通事故が発生したときに,一方当事者が停止(停車)していたにもかかわらず,相手方保険会社から「直前停止(停車)なので過失がある」と主張されるときがあります。

直前停止(停車)につき,「衝突の3秒前以内の停止(停車)だと過失が発生する」と説明するブログも存在しているようです。

それでは,実際に裁判で直前停止(停車)が争われたとき,裁判所はどのように判断しているのでしょうか。

まずは,10%の過失割合を認めた裁判例です(太字にした部分及び(省略)と記載された省略部分は当職記載)。長いのですが,きちんと読まないと誤解してしまうため引用します。

「(1) 前記前提事実、証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
ア 本件道路は都道d号線方面から西に延びる一方通行の規制のある道路である。車道の幅員は3メートルないし4メートルであり、両側に幅員0.9メートルないし1.1メートルの路側帯が設けられている。
 本件道路は平坦な直線路であり、前後の見とおしは良い。
 本件道路の両側にはマンション等が建ち並び、本件事故現場付近には本件道路の南側路外に本件駐車場がある。本件駐車場には5つの駐車区画がある。
イ 被告は、平成20年9月27日午後10時50分頃、被告車を運転し、本件道路を走行中、本件駐車場に差し掛かり、空いていた東から2番目の駐車区画に駐車するため、本件駐車場の前を通過し、本件駐車場の西端付近に一旦停止し、ハザードランプを点灯させ、ハンドルを切って、時速約5キロメートルないし6キロメートルで左後方に向けて後退を開始した。
 被告は、後退を開始する際、約30メートルないし40メートル後方に、本件道路に左折進入してくる原告車を認めたが、被告車のバックモニターを見ながら、そのまま後退した。
ウ 原告は、同時刻頃、原告車を運転し、都道d号線の側道から左折して本件道路を進行中、被告車が後退進行してくるのを認め、本件駐車場の東から2番目の駐車区画付近で停車したところ、停車直後に原告車の前部に被告車の後部が衝突した。
 被告は、衝突して初めて原告車の存在に気付き、ブレーキを踏んで停止した。
エ 本件事故により、原告車のフロントバンパ中央付近の上部(ナンバープレートの上部)及びラジエーターグリルを中心に変形・割れ、擦過傷等が生じた。

 (省略)

 (3) 上記認定事実によれば、被告は、本件道路を後退して路外駐車場に進入するに当たり、後退開始後の後方注視を怠った結果、原告車と衝突するまで後方の原告車が近接していることに気付かなかった過失があり、その過失は重い。他方、原告にも、前方の被告車の動静に注意すべき義務に違反し、被告車が後退することが予見できる状態であったにもかかわらず、被告車の駐車区画への進入経路付近まで原告車を走行させて衝突直前に停止した点において、なお不注意な点があったというべきである。
 以上に照らすと、原告について10%の過失相殺をするのが相当である。」(D1-LAW,平成27年2月26日/東京地方裁判所/民事第27部/判決/平成23年(ワ)37519号)

次に,停止(停車)した側に過失はないとした裁判例です(太字にした部分は当職記載)。

「結局のところ,既に認定及び説示したとおりの各車両の損傷状況,Y1車の動線及び走行態様(低速で徐行したこと),後退開始から衝突までの時間に係る第1事件原告及び第1事件被告の供述内容等を踏まえると,Y1車が後退を開始してからX1車に衝突するまでの時間は,各供述の中間的な数値であるせいぜい3又は4秒程度であったと考えるのが最も自然であり,既に認定及び説示したとおりの事実関係を併せ考慮すれば,X1車の停止位置は,別紙1記載(ウ)の地点よりもう少し北側の地点であり,かつ,Y1車が同①の地点付近(同地点から若干東側寄りの地点の可能性もある。)から南北道路に平行な態様で後退直進した場合にY1車の後部右側とX1車の前部左側が衝突する位置(同(ウ)の地点よりもう少し西側の可能性もある。)であったものと認められる。

 なお,別紙1記載の駐車トラックの存否については当事者間に争いがあり,その存否については証拠上判然としないものの,各車両の位置関係を含む本件事故の態様は前記認定のとおりであり,駐車トラックの存否は双方の過失の有無及び割合を検討する上で特段有意な事実であるとは言い難い(仮に,第1事件被告の供述のとおり,駐車トラックが存在しなかったとしても,そのことから直ちにX1車が本件駐車場の西側出入口から進入したものと認めるには足りない。)から,この点については検討するまでもない。
イ 本件事故の態様は既に認定したとおりであり,第1事件被告は,本件駐車場内の駐車区画ではない場所に停止していたY1車の後退を開始したのであるから,発進の際には後方の安全を確認するとともに,後方で停止しているX1車の動静に留意しつつ進行しなければならない注意義務を負っていたというべきである。しかし,第1事件被告は,同義務を怠り,漫然とY1車を後退させて本件事故を発生させたのであるから,この点に過失が認められる。
 よって,第1事件被告は,民法709条に基づき,本件事故により第1事件原告に生じた損害を賠償すべき責任を負う。
ウ 他方,第1事件原告は,前方で停止していたY1車のブレーキランプが点灯したのを認識してX1車を一旦停止させており,Y1車の動静に留意しつつ進行していたことが認められる。また,Y1車が後退を開始してからX1車に衝突するまでの時間が前記認定のとおりであることに照らすと,X1車がY1車の後退を阻む形で直前停止したものとはいえない。さらに,第1事件原告がX1車のクラクションを鳴らしたか否かについては当事者間に争いがあり,第1事件原告の供述以外の的確な証拠はないものの,前記認定のとおりの各車両の位置関係等を含む本件事故の態様に照らすと,仮に,第1事件原告がクラクションを鳴らしていなかったとしても,そのことが直ちに第1事件原告の過失を基礎付ける事情になるとまではいえない。
エ 前記イで認定及び説示したとおりの第1事件被告の基本的過失の内容,既に認定したとおり,第1事件被告は衝突時までX1車の存在に気が付いておらず,このことは第1事件被告による後方の安全確認が極めて不十分であったことを推認させる事実であり,過失の程度は著しいものと認められること,前記ア及びウで認定及び説示したとおりの事情等に照らすと,本件事故はY1車による純然たる逆突事故であると認められるから,第1事件原告に相殺されるべき過失は存在しないというべきである。
 以上によれば,本件事故の過失割合は,第1事件原告側が0割,第1事件被告ら側が10割である。」(判例秘書,大阪地方裁判所判決/平成30年(ワ)第10343号、平成31年(ワ)第1101号、平成31年(ワ)第1104号)

これらの裁判例を根拠に,「衝突前3~4秒以内の停止(停車)では,停止(停車)した側にも過失割合が認められる」と説明されることもあるようですが,果たして正しい説明でしょうか。

前段の東京地裁の裁判例では,過失を認める根拠として「原告にも、前方の被告車の動静に注意すべき義務に違反し、被告車が後退することが予見できる状態であったにもかかわらず、被告車の駐車区画への進入経路付近まで原告車を走行させて衝突直前に停止した点において、なお不注意な点があった」という理由を挙げています。

この理由を細かく見ていくと,①被告車の駐車区画への進入経路付近まで原告車を走行させて,②衝突直前に停止した,という2つに分けることができます。

つまり,過失が認められるためには単に「直前停止(停車)」であったというだけでは足りず,相手方と衝突してしまうような場所に停止(停車)していたか,ということも条件とされています。

このことは,後段の大阪地裁の裁判例も同様です。

大阪地裁の裁判例で過失を認めなかった根拠として,「Y1車が後退を開始してからX1車に衝突するまでの時間が前記認定のとおりであることに照らすと,X1車がY1車の後退を阻む形で直前停止したものとはいえない。」という理由が挙げられています。

ここでも,X1車がY1車の後退を阻む形で直前停止したものとはいえないと,相手方と衝突してしまうような場所に停止(停車)していなかった,ということが条件とされているのです。

このような裁判例の理由付けを見ると,「直前停止(停車)」に過失が認められるかという判断において「秒数(時間)」のみで考えることは誤りであるといえるでしょう。

このことは,停止(停車)したからの時間がそれなりにある(例えば10秒程度)の場合に,停止(停車)した車両に過失割合を認めた裁判例が存在していることの説明にもなります。

たとえ停止(停車)したからの時間がそれなりにあったとしても,停止(停車)した場所が不適切で,事故を誘発してしまうような場所に停止(停車)していたとか,事故を容易に防止できるのにしなかったという要素が認められる場合には,停止(停車)していた車両にも過失が認められるということです。

つまり,単に「直前停止(停車)」かどうかということで議論することには意味がなく,事故に至った状況についてもきちんと整理した上で,過失の問題を検討しなければなりません

交通事故は,取り扱っている弁護士が多数いるため受任後の進め方につき特に差がないように思われるかもしれません。しかし,細かな部分まで正確に理解できているかという点については,弁護士によって大きな差がある分野です。

当事務所は保険会社から困難な事件の依頼も直接依頼されている実績がありますので,ご相談が必要であればお電話いただければと思います。