時効制度が民法上定められていますが,時効についてあらかじめ放棄したり,伸ばしたり,短縮することを当事者間で合意した場合,有効になるのでしょうか。
まず,民法で「第百四十六条 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。」と明確に定められていることから,時効の完成前にあらかじめ時効の利益を放棄することはできません。
次に,時効期間を伸ばすことはできるのでしょうか。
たとえば,5年の時効期間を10年にするといった合意が問題になります。
しかし,このようえな時効期間の伸長合意は,①永続した事実状態の尊重という時効制度の趣旨を没却し,かつ,②債権者が債務者の窮状に乗じてあらかじめ消滅時効の利益を放棄させるという弊害を生じさせ得る可能性があるため,原則として無効と考えられています。
最後に,時効期間を短縮することはできるのでしょうか。
ここで時効期間を短縮する合意は,時効期間を伸長する合意のような弊害がないため,一般に有効と解されています。
しかしこのような合意も,その内容によっては民法90条や消費者契約法10条等により無効となる可能性があります。
例えば,事業者と消費者との間で,瑕疵担保責任の存続期間を短縮するような場合(建物の売買などで見られる類型です)には,消費者契約法10条に照らし短縮合意が無効とされる余地があります(時効・期間制限の理論と実務142ページ)。
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