相続人が相続放棄(民法938条)をした場合,その相続人の債権者が詐害行為取消権(民法424条)に基づき,相続放棄の取消を求めることはできるでしょうか。
この点,遺留分減殺請求権の放棄については相続人の債権者が詐害行為取消することは可能とされています。
しかし最高裁は,相続放棄に対する詐害行為取消権の行使を否定しています(最判昭和49.9.20,詳解相続法 74ページ,新版注釈民法(10)Ⅱ債権(1)839ページ)。
相続放棄は身分行為であるため,詐害行為取消権の行使対象ではないというのがその理由です。
遺留分減殺請求権との比較で異論も学説にはあるようですが,現在のところ,裁判実務では相続放棄を相続人の債権者が詐害行為取り消しすることはできないとなっています。
もし仮に相続財産の散逸を防止したいのであれば,被相続人が生きている間に債権者がいない推定相続人等に相続させる遺言書を作成した上で,被相続人死亡後に債権者がいる相続人が相続放棄をする方法が検討されることとなります。