「単身赴任」は離婚破綻の判断要素となる「別居」にあたるか?(結論:あたらない)

夫婦どちらかが単身赴任している場合に,離婚破綻の判断要素となる「別居」にあたるのかについて,インターネットではあまり根拠を示さず「あたらない」としているサイトがままみられます。

 これにはきちんと根拠があります。それは平成八年二月二十六日に法制審議会総会において決定された「民法の一部を改正する法律案要綱」において,以下のような規定があるのです。

 

第七 裁判上の離婚  一  夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができるものとする。ただし、(ア)又は(イ)に掲げる場合については、婚姻関係が回復の見込みのない破綻に至っていないときは、この限りでないものとする。     (エ)  夫婦が五年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているとき。

 

つまり,離婚破綻の判断要素となる「別居」とは,「婚姻の本旨に反する別居」を指しています(男性のための離婚の法律相談26頁)。

単身赴任している場合は,夫婦間で単身赴任の合意は当然しているでしょうし,生活場所が別々になるのも会社の指示等によるものであるため,当然には「婚姻の本旨に反する別居」にはなりません。

 

単身赴任が「婚姻の本旨に反する別居」に変化するためには,単身赴任していたという事情だけでは足りず,何か別の事情が必要となるでしょう。