昔購入した不動産について,売買契約時に仮登記をしただけになっていていまだに本登記をしていないというケースは割と多いようです。
長年,その土地に居住していて不都合もないと思っていたら,相続のときなどに実は仮登記しかしていなかったことが発覚することもあると聞いています。
仮登記をしたときの当事者の方が全員いれば交渉で本登記にする手続をすればよいのですが,当事者の方が亡くなっていたり,相手方が非協力的だったりすると,交渉では本登記にすることができない場合があります。
この場合は,裁判所で本登記にするための判決をもらい,仮登記を本登記にする必要のある一方当事者だけで登記手続をすることになります。
判決をもらうためには,訴状を作成して裁判所に提出しなければなりませんが,実はこれが結構やっかいだったりします。
というのも,裁判所で判決をもらったとしても,その判決が法務局で登記がきちんとできる判決になっているかはわからないためです。
法務局と裁判所は,特に連携しているわけではありませんし,裁判所で登記ができる判決になっているかをわざわざチェックするものではありませんので,場合によっては「登記ができない判決」が出てしまうこともありえます。
このようなことを避けるためには,訴状作成の段階で登記ができる判決をもらえるようなきちんとした「請求の趣旨」の記載をした書類を作る必要があります。
さて,仮登記には不動産登記法105条1号2号に基づき,1号仮登記と2号仮登記があります。
簡単に説明しますと,1号仮登記は本登記のための書類がそろわない場合にする仮登記,2号仮登記は将来権利変動する場合の請求権を保全するために行われる登記,という違いがあります。
実は1号仮登記と2号仮登記の場合で,「請求の趣旨」の書き方が違うのですが,いずれの場合でも問題なく登記ができる「請求の趣旨」の書き方があります。
具体的には,
「被告は,原告に対し,別紙物件目録記載の不動産について,平成20年1月1日売買を原因として,水戸地方法務局××出張所 平成20年1月10日受付第○○○○○号をもってされた所有権移転請求権仮登記に基づく本登記手続をせよ」
という「請求の趣旨」を書くことになります。
仮登記をすると,仮登記の登記部分に法務局の名前や日時・番号が入るので,その番号等のとおりに本登記手続をしなさい,という「請求の趣旨」を書くこととなります。
仮登記を本登記にするだけ,と聞くと簡単に思えますが,不動産登記には特有の問題があり,すでに述べましたように下手をすると裁判をしたのに登記ができない,ということにもなりかねません。
不動産登記に関する訴訟は,不動産について詳しい弁護士に依頼することが重要だと思います。