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交通事故において物損のみの場合,慰謝料が認められるか(結論:原則として認められない)

交通事故が発生したとき,人身傷害が生じた場合はその内容に応じて慰謝料が発生します。

では,物的損害,いわゆる物損のみの場合に,被害者は慰謝料を請求できるのでしょうか。

結論は,原則としてできないということになります。
物損だけで慰謝料が認められる場合はほぼありません。

まず,裁判実務において,損害は「差額説」,つまり事故時の価格と,事故によって発生した損害の差額を賠償しなければならない,という考え方が基礎となっています。

物損によって生じた損害は,車両であれば修理がされ,事故時と同じ状態になれば,事故によって発生した損害との「差額」は回復されたと考えられます。

つまり,物損では単純に「事故時の価格が回復されれば,損害はすべて回復された」と考えるわけです。

ただ,現代法律実務の諸問題(平成19年度研修版 111頁)において紹介されているように,相当特殊な場合に慰謝料が認められることがまれにあります。

具体的に認められた事件は,
1.加害者が飲酒運転でその加害者をつきとめた
2.プロの作家が作成しその作家にとって記念碑的な作品である陶芸作品を壊されてしまった
3.石垣修理をしたとしてもまったく同一の状態になるわけではない
などかなり特殊な内容となっています。

物損において一番よくある車が壊れたという場合,その車が世界に一台しかないとか,美術品的価値があるとか,そういうときでないと慰謝料請求は難しいと考えられます。

もし部品交換などのカスタムをしていたとしても,その部品の価格は算定できますし,車そのものも工業製品として替えがきくものですから,単純にその価格の回復がされれば,損害賠償の義務は果たしたということになるでしょう。